岐阜地方裁判所 昭和44年(む)4号 決定 1969年11月18日
主文
本件各準抗告を棄却する。
理由
第一 検察官の本件各準抗告申立の趣旨および理由の要旨は被疑者らは、頭書の罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があり刑事訴訟法六〇条一項各号に該当することが明白であるにもかかわらず、勾留の必要性がないとして勾留請求を却下した原裁判はその判断を誤ったものであるから、右裁判を取消したうえ勾留状の発付を求めるため、本申立におよんだというに在る。
第二 当裁判所の判断
一 刑訴法六〇条一項一、三号の事由の有無
一件記録および当裁判所の事実の取調の結果によれば、被疑者らは現行犯として逮捕されて以来、警察署、検察官、原裁判官のいずれに対しても被疑事実はもとより、住所、職業、氏名、年令等一切について黙秘権を行使したこと、しかし弁護人となろうとする村橋泰志弁護士において右被疑者らの身柄を引受け被疑者らもこれに応じ、捜査官および公判裁判所において必要があれば、同弁護士を通じて一切の連絡がとれることを確約していたこと、その後、被疑者らの心境が変化し、いずれも当裁判所受命裁判官に対し、住所、氏名を開示し、学生たる身分を明らかにしたこと、公判に至った場合、裁判所に出頭する旨確約したことがそれぞれ認められる。右事実および本件事案の性質に鑑み、被疑者らにおいて刑事訴訟法六〇条一項一、三号に該当する事由があるとは認められない。
二 同二号の事由の有無
被疑者らはいずれもデモ行進中、現行犯として逮捕されたものであり、その犯行の態様は、≪証拠省略≫により明らかにされており、今更被疑者らにおいてこれを覆す余地がなくその他、全体集団の中で被疑者らの果した地位役割等の情状についても各被疑者がデモ行進中にとった客観的行動その他から判断することが容易であるものと考えられる。その他罪質等から考え、被疑者らが被疑事実について黙秘しているからといって、同二号に該当する事由があるとは認められない。
三 結論
右の次第であって本件勾留請求を却下した原裁判は相当で、本件各準抗告は理由がないので、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項後段によりいずれもこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 丸山武夫 裁判官 川端浩 太田幸夫)